遠くになりにけり

我が青春の80'sロックは、21世紀となったいま、もはや跡形もありません。どこの大型CDショップでも、ネームプレートすら棚から撤去されてしまいました。90年代にはショップの中を巡回して再発CDを探す楽しみがまだ残されていましたが、それも今は昔のお話です。

写真はノルウェーのデュオ、フラ・リッポ・リッピ の 4thアルバム。あの Walter Becker のプロデュースによる珠玉の1枚です。彼らの最高傑作と信じて疑わない 3rdアルバム Songs は CD で買い直すことができず、デビューアルバムは姿を拝むことすらできぬまま、出会いを封じられてしまいました。合掌。

理想と現実のギャップに自らを追い込むしか為す術がなかったあの頃、人っ子一人来やしない小さな山に登り、ウォークマンで 80's を聴きながら、ただただ下界を眺めていたものです。その音は、当時の私にとって傷口をグリグリ切り開く鋭いナイフのような存在でした。音にいろいろな感情が染み付きました。

改めて聴くたび、当時の痛みは甘酸っぱい思い出としてよみがえってきます。切なさや苦さは熟するほど甘みに変わってくるようです。

渋柿みたいなお話になってしまった(笑)。